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   インタビュー 『戦線スパイクヒルズ』第3巻のみどころ 06.03.27  
   
 

『戦線スパイクヒルズ』単行本第3巻(3月25日発売)のみどころを、漫画家の井田ヒロトさんにうかがいました。第3巻では、井田さん自身が「大好き」というチサト婆さんが大活躍。井田さんはどのような思いで描かれたのでしょうか。

 
   
 

――第3巻のみどころについて、おきかせください。

原作になかった、キクチの家庭事情に触れる回が入りますので、原作の補完としても楽しんでいただければ幸いです。チサト婆さんが出張りまくる巻になっていますが、こちらとしては相当格好いいキャラとして描いたつもりなので、その片鱗でも感じ取っていただければ大変嬉しく思います。

――キクチが「トム・ソーヤー」について語る場面は、作品を通して重要なシーンかと思います。どのような思いで描かれたのでしょうか。

彼女は、登場人物の中で一番「船出」を望んでいるキャラクターだと思うんです。今いる場所に何の未練もなく、もっと素敵な世界に行くことを夢見ているタイプ。彼女にとってのノブオやスウガクの価値は、ひょっとしたら「自分をその場所へ連れて行ってくれる人間」というところが大きいのではないかとも思います。

「自分を待つ素敵な世界への憧れ」が、第1話からずっと彼女の基本姿勢であると思うので、絵的にもそういう彼女の心情を表現できていたら嬉しいです。この回の表紙の絵も、そういうことを表現できたらと思ってがんばりました。

――その表紙も含め、扉や目次のイラストそれぞれに込めた思いは(イメージ的には、担当編集者から「“修次と彰”で」というリクエストがあったときいていますが)。

表紙表紙扉
目次目次

どこからそれを(笑)。“修次と彰”って、たしかドラマの『野ブタ。をプロデュース』に出ていた男二人組ですよね。まあ、途中の1回しか観なかったんで、ちょっと顔すら覚えていないんですが……。

表紙については、ノブオとスウガクの関係性が微妙に変化したり、キクチの内面が明らかになったりする巻なので、これまでの引きの構図より、よりキャラクターを大きめに描いて、表情まできちんと見せられればと思いました。

カバー裏に、1986年のスウガクとキクチを描いたのですが、これは当時の二人を考えつつ描けて、大変楽しかったです。いつか単行本の書き下ろしか何かでこの二人の読みきりも描ければな、と思います。

目次イラストは、たしかラフすら担当さんに提出せずに(時間の関係上)、好き勝手に描いた覚えがあります。なぜか、この三人を一枚の絵の中に描くと、いつも全員違うところ見てるんですよね(笑)。最近気付いたんですが。そこら辺が、この三人のキャラクター性を端的に示しているような気もします。

――「ここが大変だった」というシーンは。

キクチを取り巻く環境です。女性のどろどろした世界の感触が掴めなくて、そこら辺はドラマなどの既成作品を参考に、なんとかトライしてみましたが、どうでしょうか……。

あと、担当さんに大変ご迷惑かけてしまったのが、麻薬をやった回後のキクチの描き方です。彼女のキャラを一時的に見失ってしまい、大変なことになりました。とち狂ったネームを何回も提出することになってしまい、時間もなくなるし精神的にも追い詰められるしで……。

――麻薬のシーンは、描き方が難しかったのでは?

うちにあった、気の違っちゃった人の特集本を参考にしました。あと、寝る寸前の意識の世界って、多分薬でトリップしているときの意識に近いものがあると思うので、その実体験を思い出しつつ描きました。描くのにさほど困難を感じるシーンではなかったです。

――単行本化にあたり、書き直したところ、追加したところは。

雑誌掲載時に、少々絵が荒れていた箇所に手直しを加えたり、トーンを追加したりという地味な改編作業を行いましたが、多分見てもわからないかと思います。第2巻同様、巻末におまけ漫画を描かせていただきましたが、あれについては相当好き勝手やらせていただいているので、気分を害された方がいたら本当に申し訳ありません。でもまたページ数を与えていただけたらやってしまうと思いますが(笑)。

――最近、作品制作に影響を与えたものは。

「いかな凡人でも、人生で二度だけ最高傑作を作るときがある。それは○○(失念)を書くときと、犯行声明文を書くときだ」という名言をどこかで見たんですよ。ずっと忘れていたんですが最近ふと思い出しまして。実際、昔犯行声明文を書いたことがあるんですが(笑)、たしかに気分が乗って漫画を描いているときの心理はあれに近いものがあるなあと思って、最近原稿に向かうときはなるべくその感情を思い出して描くように心がけたりしています。

――ありがとうございました。

 
  ※『戦線スパイクヒルズ』は、『ヤングガンガン』(スクウェア・エニックス)に連載中。