≪ もどる
さがや
教育画劇 松田幸子様

今回は、絵本『ぜつぼうの濁点』を担当された教育画劇の編集者、松田幸子さんにお話を伺いました。
——なぜ、『ぜつぼうの濁点』を絵本にしようと思われたのでしょうか。
具体的にこの作品を絵本に、という思いが最初からあったわけではないんです。自分がいる児童書の分野で、ヤングアダルト向けの本をいっしょに作らせていただきたいという内容の手紙は、ずっと以前から何度かお送りしていました。ただただ、作家から生み出されるものを何でも受け止めますよ、という姿勢でした。
だから岩波書店から出された『百人の王様 わがまま王』を読んだときは、「やっぱり原田さんの中にも、こんな世界があったんだ!」と、うれしくなってしまいましたね。この本のサイン会にうかがい、サインをしていただきながら「はじめまして」と。何度も手紙を送っていながら、実はそのときが初対面だったんです(笑)。
ちょうどその日のトークショーで、ひらがなの国の話、つまり「ぜつぼうの濁点」の内容を、少しだけお話しされていました。これは絵をつけたらおもしろそうだと思って原田さんにもお伝えしたら、「おれもそう思ってたんだよー」と。そのときから、ずっとあたため続けてきた本なんです。
——絵を柚木沙弥郎さんにお願いした経緯は?
絵をつけるにしても、これはひらがなの国の話です。「絵描きさん、苦労するだろうなあ」とは、原田さんもおっしゃっていました。だったら理屈じゃなくて抽象の世界で、画家の方に存分に遊んでいただく方向でもいいのではないかと思いました。
柚木さんは工芸家であったり染色作家であったりと多才な方ですが、抽象的で色相感がとても印象的な絵も数多く手がけておられて、以前から作品を拝見していました。柚木さんの絵画と原田さんの文章とが合わさったら、それはもうおもしろいことになるのではないかと勝手に想像して提案してみたところ、原田さんにも喜んでいただいて、ぜひお願いしたい、と。
——依頼時、柚木さんはどのように?
幅広く活動しておられる方ですから、最初は「新しい絵本はちょっと……」という雰囲気だったんです。でも、どうしても引き受けていただきたいと、原稿を持参して仕事場を訪問し、朗読しました。
——朗読されたんですか?
お渡しして、読んでいただこうと思っていたんですが、柚木さんは「読んでしまったら、ぜったい引き受けなければならないでしょ……」とおっしゃったんです。「では、朗読させていただきます」と(笑)。つたない朗読だったと思うんですが、柚木さんは目をつむって聴いておられて、最後に「おもしろい」と言ってくださいました。文章の力強さに驚いた、引き受けましょう、と。すごくうれしかったですね。
——今年の2月に原画が完成したということですが、でき上がった絵をみたときの、村長の反応は?
姿勢を正してご覧になりながら一言、「いいね!」と。ため息をついておられました。
——絵本にするにあたって、村長からの要望は何かありましたでしょうか。
いえ、好きなようにやっていいですよ、と。わたしの気持の面で、「絵本の編集者になって、初めての本を作るときの気持でやってごらん」と、おっしゃっていただきました。これまでの経験で「児童書だからこうでなければならない」「絵本だからこうでなければならない」という考えができ上がってしまっているとしたら、そういうものはいったん忘れてみよう、ということです。
——『ゆめうつつ草紙』に収録されているものから、変更点はあるのでしょうか。
もちろん内容は同じなんですが、難しい漢字をやさしい言い回しにあらためたりという、若干の変更はあります。すでに活字になっているものですが、原田さんは手書きで再度書いてくださいました。絵を描いていただくに際し、柚木さんにイメージを膨らませていただくためのものでもありました。肉筆の原稿のほうが、思いがきっと伝わるから、と。さらに肉声でも伝えたいということで、原田さんご自身が朗読したMDまで、用意してくださいました。このMDは、わたしたち社員一同でも聴きましたよ(笑)。
——最後に、村民のみなさんにメッセージをお願いします。
わたし自身、これまで「濁点」の存在なんてほとんど意識しないでことばを使ってきましたが、この作品に出会って、見方が変わりました。日常的に使っている「ひらがな」の奥深さとおもしろさを、読者の方々にも感じていただければと思います。表紙からは、ちょっと絶望的な印象を受けるかもしれませんが、結末はぜったい絶望させません!
2006年6月22日収録





