
【文庫本】集英社文庫 2003/01 ISBN 9784087475301
ついに出ました、『はらだしき村』。
単行本にしないで、いきなり文庫です。こんなご時世ですし、単行本はなかなか売れません。文庫本の方が買いやすいということで、できるだけ多くのみなさんに読んでいただきたいという願いを込めて、文庫オリジナルを出すことにしました。
内容は、ここ『はらだしき村』に連載したエッセイ、それから各誌様々なところに書き散らしたエッセイをまとめたものです。「書き散らした」と申しましても、書いた時期が同じなので、文体がとても揃っていて、自分で読んでも「この一冊のために全部書いたかのようだなあ」と思うまとまりのよさです。それは集英社の瀧川くんも驚いていました。40歳を過ぎてから、初めて出すエッセイ集になります。
全体を読むと、瀧川くんの言によれば、非常にアット・ホームな感じがして、「家族」というテーマに着地している、とのことです。音楽のこととか色々と書いてきたように思うんですが、結局は家族のこと、友達のことについて書いているものが多くて、たしかにそうかなあ、と思います。僕は長い間「息子の立場」からエッセイを書いてきましたが、今は徐々に「父親の立場」へと移行してきています。
エッセイについては、一時期僕はエッセイの連載が非常に多く、そのために小説が書けない、と言って自分の才能がないのをエッセイのせいにしていたことがあります。だからもうエッセイは書かないで、小説を書くんだ、と言い張っていた時期もあったんですが、最近はちょっとしなやかな考え方になりまして、いい文章であれば、面白い文章であれば、ジャンルは問わない。エッセイだって、小説だって、戯曲だっていいじゃないかという風に考えるようになりました。読んだ人がそこから何かひとつ拾ってくれるのであれば、別にジャンルにはこだわりません、という態度に変わってきたんですね。
それは、原田宗典アワーvol.3、vol.4の時にも読んだ、川口松太郎の「ゴルフと祝めし」というエッセイに大変感銘を受けたからです。こういう文章がいつか書けたらいいなあ、と憧れました。川口松太郎の文章を読むと、ジャンルなんて関係ないんだな、とつくづく思います。この『はらだしき村』に収められているエッセイも、「エッセイだから」という気持で書いたものはひとつもありません。いい文章を、面白い文章を、と思って書いたものばかりです。あんまり力を入れると文章が乱れるので、よい程度に肩の力を抜いて書きました。エッセイを読んで拾うものと、1500枚の小説を読んで拾うものとは、何ら変わりはないと思います。文章は長さではありませんし、ジャンルでもありません。
この間、志賀直哉の「リズム」という随筆を読んでいましたら、「文章とはリズムである。いいものは、心に響いてくるものは、リズムである」と言っていました。書く時の精神の強弱、そのリズムがないと、どんなに上手い文章でも、くだらなくなってしまいます。これからも自戒の意味を込めて、小説の神様のこの言葉を大事にして、「僕のリズムがある」文章を書いていきたいと思います。『はらだしき村』は、その第一弾です。未完成ではありますが、僕がどのような精神のリズムで文章を書こうとしているのかということを、お楽しみください。
※『はらだしき村』担当編集者、集英社瀧川さんのインタビューは、「さがや」で読めます。
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