
【単行本】幻冬舎 2006/03 ISBN 978-4-34-401126-0

【文庫本】幻冬舎文庫 2008/02 ISBN 978-4-34-401126-0
2001年10月から3年間、『星星峡』に連載していたものに手を入れて、ようやく一冊になりました。原研哉くんが「会心作」と自分でも言っていた装訂にも注目していただきたいですね。
いちばんたくさんの漢字が当てはまる、つまり多くの意味をもっているひらがな一文字はなんだろう? というのが、最初の思いつきでした。それが「し」だったわけです。歌う「詩」もあれば、歯医者の「歯」もあれば、「死」「誌」「覗」もある。それぞれについて、そのときの気持のままに書きました。早く本にしたかったのですが、最後の大ネタ「覗」の前篇を書いたところでダウンしてしまいまして、そのまま連載は終了。結局後篇は書き下ろして、やっと本になった次第です。ほかにも、歯医者さんのおばあさんの「歯」、父親の手術のときの「死」と、大きいネタが目白押しです。
これははたしてエッセイといえるのかなあ? 最近僕は、「小説を書かなきゃいけない」とか「エッセイじゃなくっちゃダメ」といった思いが小さくなって、とにかく読んで「おもしろい」文章を書いていきたいな、と思っています。「おもしろい」というのは、笑えるという意味だけではないですよ。だからこういうエッセイとも小説ともつかないものに仕上がったのは、ある程度ねらっていたところもありました。読者のみなさんも、「原田宗典、ちょっと大人になってきたかな」と思っていただけるのではないでしょうか。
過去に書いてきたエッセイを愛読してくださっているみなさんのなかには、いつまでも僕のことを「お隣のお兄さん」「青年ムネノリくん」というふうにみている方も多いと思います。でも、さすがに僕も年をとります。年をとるにつれ、「どんなふうにシフトしていけばいいんだろう?」という思いが大きくなってきました。この一冊を出したことによって、30代の終わりからずっと模索してきたその姿が、ようやく少しみえてきた気がします。今後予定している作品も、短篇集、絵本、翻訳ものと、いろいろな形で世に出ていきます。その先駆けとして『し』という本があるのかなと、思っています。
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「17歳だった!」高校生の頃からファンをしてます(笑)
最近の原田さんの文章は、原田さんらしさを残しつつ、
けれど円熟味を帯びてゆっくりと進化している、そんな気がします。
笑えて考えて、そして泣ける。
様々なミニフィルムを見たような気がする本でした。
文中でも引いておられる
志賀直哉氏の言葉を借りるならば、
「すぐれた人間の仕事ーする事、いう事、書く事、何でもいいが、それに触れるのは実に愉快なものだ」
そんな気持ちにさせてくれた本でした。
それにしても「し」っていろんな言葉があるものですね。
今度から国語辞典を引くのが楽しくなりそうです。
投稿者 りず : 2006年05月07日 07:07
「円熟味を帯びてゆっくり進化している」…「円熟味」か。
原田先生、遠巻きに老けてる?と言われとるようなないような
今日この頃。w
投稿者 ぷーや : 2006年05月08日 10:55
年を重ねた原田村長の、
新たな方向性を見い出した作品は、
ひと読みで、面白さプラスしんみりだったり、
何かを見つめなおすきっかけになったりと、
心にひびいて二度、三度もおいしい作品でした。
投稿者 うにお : 2008年04月06日 21:04