原田宗典 作品リスト

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さがや

鴨南カンパニ T田様


今回は、このたび角川書店から出版される『河童』をはじめとする、一連の「ちょっと大人な絵本。シリーズ」を企画された、鴨南カンパニのT田さんにお話を伺いました。

―― まずお聞きしたいのですが、「ちょっと大人な絵本。」とは、どんな絵本なのですか?

これは、昔の有名な文学を、現代作家と画家が、それぞれの感性で全く新しく書(描)き下ろした創作絵本です。

―― いわゆる「世界の名作」と呼ばれる作品を絵本にしよう、ということですが、思い立ったきっかけはなんだったのでしょうか?

昔のブンガクって、すごく敷居が高い感じがしますよね。ましてや現代の小説も読まれる機会が減っているように思われます。中身自体は時代関係なく面白いのに、そういうのって、もったいないですよね。どうすれば沢山の方々が「読みたい」と感じるのだろう? ということを3年くらい前から漠然と考えていました。
ならば、絵本という形に置きかえて世に出したら、絵がつく分、手に取りやすいし、ムズカシク感じなくなるんじゃないかな、と思いました。それがこの企画を思い立った経緯です。
シリーズということで、『河童』の他に『ボヴァリー夫人』と『はつ恋』と、同時に3冊出すことになっています。こちらはそれぞれ姫野カオルコさんと小川洋子さんにお願いしました。

―― やはり、名作を読み継いでほしい、という思いが強いのでしょうか?

いいものって、埋もれちゃったらつまらないですよね。いいものは、みんなに知ってほしいし、知れたらうれしいですからね。幸せですし。それは名作だけじゃなくて、すべてのことについて言えますけれどね。

―― では、なぜ『河童』を選ばれたのでしょうか? それを、なぜ村長にお願いしようと思われたのでしょうか?

絵にしたい作品を具体的に考えたときに、芥川龍之介の『河童』というのが自分の中で思い浮かびました。で、『河童』だったら原田さんしかいないだろう、と思ったんです。

―― 『河童』=村長、という風に結びついたのは、言ってみればカン、だったわけですか?

んー、カンといいますか、原田さんしかいない、と、そんな感じです。もともと『河童』の原作を僕は読んだことがあって、原田さんの書かれる小説も読んできていたわけですが、この企画を進めるにあたって『河童』を再読したときに、「あ、もう、原田さんしかいない」――と。カンと言えばそうなのかもしれませんが。

―― 結びつけるものが何かあったんでしょうね。

ええ。でも、これを読まれて、多分みなさんそう感じると思いますよ。「あ、これは原田さんじゃなきゃ書けなかったな」と。読んでいただければ、わかっていただけるんじゃないかなあ……。これを読んで、原作も読んでいただければ、特に。

―― 村長の作品は、結構前から読まれていたんですか?

そうですね。90年代はじめ、原田さんの作品が世に出はじめたころ、よく読んでいました。特にエッセイを、さまざまな媒体で目にすることができていましたからね。以来、好きな作家です。

―― 村長本人に会われての印象はいかがでしたか?

おっきい方だなあ、というのが第一印象ですね。原田さんにご連絡したら、「いいねえ、一度、会おうよ」と言ってくださいまして。すごく緊張して赴いたわけですが、そんな必要はないくらいに、気さくで、人間っぽく、飾らない方でした。わからないこと、思いついたことを、言いやすいんです。それをちゃんと、受け入れてくれる。その意味で、おっきい方だと思います。

―― 形としては、「原田宗典バージョン」と言える『河童』になっているんですよね。どのようにアレンジするかは、村長におまかせということだったのでしょうか?

そうです。『河童』って、原作は1927年、昭和のはじめ、芥川が死ぬ少し前に書かれた作品です。端的に言うと、その時代の日本を社会風刺――単純に「社会風刺」とはくくれないんですが――したような話なんですね。なので、それをそのまま今の時代に絵本として創り変えたとしても、時代が古い。そこを、今の時代を背景として、原田さんが、いま感じていることをベースとして書き換えてください、という風に話はさせていただきました。

―― 実際に書き上がったものを読まれた感想は? 村長は、「すごくいい出来になったよ」とおっしゃっていましたが。

その通りです。原作をベースとしながら、原田さんの作り出す世界が出てきて、原田節溢れる作品となりました。

―― 原作の流れの上に、村長の語り口が乗っかっている、と。

はい。原田さんも語っておられますけれども、「芥川の文体ではじまり、いつの間にか原田さんの文体になり、最後は芥川で終わる」、そんな感じです。これをどこまでみなさんが気付けるかはわかりませんが。読み比べてみるのも面白いのではないでしょうか。まずこれを手に取り読んでいただき、次に原作に手を伸ばしていただければ、最初にこのシリーズを企画した狙いどおり、ということになりますから、うれしいですね。

―― 荒井良二さんに絵を依頼した理由は?

芥川の『河童』を、原田さんに書いていただける、ということで、原田さんの書く『河童』の大体のイメージができてきますよね。それに絵を描いていただくのだったら、荒井さんしかいない、と思いました。荒井さんは絵本作家として活躍されていますが、独特のタッチで世界を表現しておられますよね。

―― 書店では、絵本の棚に並べられることになるのでしょうか?

いえ、違います。単行本の棚に置いてもらいます。絵本ってやっぱり、特殊な本だと思います。最近は比較的、大人が読む絵本、ということでいろいろ出てはいますが、やはり絵本というのは子どもが読むという認識がありますよね。そういうところとは違うところでまず売りたい、という意図があります。

―― となると、非常に幅広い方々に読まれることになると思います。まず村長のファンのみなさんが読みますし、小・中学生、高校生にも読まれるでしょう。それから、現在親になっている村長のファンが、子どもさんに買い与えることもあるかもしれません。それら読者のみなさんに対して、メッセージをお願いします。

感じるがままに、読んでいただければと思います。全部読まれたらわかるかと思うんですが、『河童』って怖い話なんです。でも、そういう目線で読まなければ、面白い話にもなる。人それぞれ、読まれる方の状況、心境によっていろいろな読み方があると思いますので、自由に感じていただきたいと思います。

―― 読者のみなさんが、この本を経て、どう原作へ展開していくのか、っていうのも、楽しみですね。

そうですね、ですがこの原田さんの『河童』っていうのは、これでひとつの作品となっていますから、独立したものとして読んでいただきたいですね。「原作とどこが違うんだろう?」なんて、一字一句を追って違いを探すような読まれ方じゃなくてね。

2003年3月5日 収録